農 業 に つ い て

 業は、人類が進化した過程において狩猟、魚の捕獲、野生の食料等の 不安な生産形態より
脱したより進化した方法と考えられる。
 世界史的には、紀元前5000年頃に、中央アジア、エジプトの大河周辺に始まったと推定される。
中国では、黄河、揚子江流域に農耕文化が発生したと考えられます。
 黄河文明は、紀元前5000年〜紀元前2000年と云われ麦を主体とした畑作が発生した
と推定されています。揚子江は稲作を主体とした農業と推定されています。

 これに比べて日本の稲作は紀元前300年頃より北九州付近で発生したようです。
この米の生産により地域的な勢力が発生して、大和の地に律令国家が誕生しました。
 大化の改新が645年ですので、これから米を中心とした国家経済が確立したといえるでしょう。
鎌倉、江戸時代の武家政権は土地本位制の上に農民を支配し石高の安定が政治基盤の確立に
なっていた。 今日まで、日本経済の重要な役割を負ってきた稲作ですが現在は、食料の自給率
の低下によりいろいろな問題が起こりつつあります。江戸時代初期で米の生産量は200万トンで
人口は1200万人程度と推定されています。
 現在は、米の生産量は約1100万トンで、人口は平成13年度で12700万人程度です。
人口一人当りの生産性を考えるならば、江戸時代が0.17で現在が0.09となります。
 日本の場合は、国土面積3700万haに対して農地550万ha程度の比率にしかない
のが原因でしょう。 つまりは農業の技術は進歩しても規模拡大が不可能なのです。
 

 明治時代〜昭和30年位までは機械化による生産性の向上がなく、かつ化学肥料、農薬が
充分に圃場に散布されず単位当りの収量は低かった。
 その後、圃場整備、水利施設の完備、農業機械の導入等により米に関していえば、1900年
から現在までに生産量が約2倍に増加しています。
 現在、日本において自給可能な品目は、米、野菜程度でその他はすべて海外からの輸入に
頼っています。 現在の供給熱量換算で、自給率は40%になっています。
 昭和40年度は73%という数字でしたから、急激な低下です。
先進国でこのような自給率が低い国は少なく、ドイツ97%、イギリス71%ですのでいかに低下して
いるかお判りのことと思います。
 自給率の低下は、国家の独立、国際的に国としての信用の有無に関係すると思います。
国内的には、農地面積の減少、土地のアンバランスな利用、中山間地域、土地条件の悪い地域
の人口の減少等の社会問題を発生させています。
 国土の均衡ある発展を基本とするならば、都市のみが独立して存在するような錯覚を持つべき
ではありません。
 国民一人当りの耕地面積は、500m2程度ですが米に換算して約200kgの生産が可能で
大人2分の消費量に該当します。 現在は熱量の半分以上を肉、魚、油脂から摂取しているので
米は消費が減少しています。
 生産効率からすれば、輸入すれば現在の1/5程度のコストで買えますが、安全性、味、
安定的な供給に不安があります。 輸入農産物の残留農薬、品質管理等で現在問題が発生
しており基幹作目は国内で安全なものを生産すべきと思います。
 現在の日本は海外に1200万haの農地で生産される農産物に該当する食料を輸入しており
国内の農地の面積の約2倍に該当します。
 
 主要な農産物輸出国のアメリカ、カナダ、オ−ストラリア等の農業生産は大規模農法で生産
コストは安いが、乾燥地帯に隣接していて気候変動に対して不安がある。
 土壌流出、生産性の低下等は一部の現象と思うが今後の世界的な人口増加、発展途上国
の食生活向上を考えれば日本だけが突出して輸入可能なのか。
 答えは、否です。 今後においては、現在のような他力本願的な食料供給体制の維持は不可能
になる可能性があります。
 今後においては、国内の農地面積を有効活用した生産体制を模索する必要があります。
何度も云いますが、今後の日本は工業生産性も他のアジアの諸国の発展で産業競争力が
低下しつつあり、輸出で得た資金で農産物を購入するとの経済構造の転換を迫られるのでは。

         中山地域にお ける秋の実り


 今後のあるべき、農業生産システムとは予測は困難 ですが国際的に自給体制を確立をすべき
客観的な状況になりつつあります。
 自給率が年々低下しているのは、農業の生産性の低さにあり一戸当りの農業所得は100万円
程度です。 この位の所得は、勤労者の3ケ月の給料にしかなりません。
 農業機械が無ければ生産出来ないので農外所得から農業の赤字を補填しているのが実態です。
今後は、農業の規模拡大と、生産品目の特化を進め所得の増加を図らなければ継続は不可能
でしょう。生産効率の向上には、圃場整備、農道の整備、水利施設の完備、加工施設の充実と
いった従来からのハ−ドの整備は公的な資金を投入して行う必要があります。
 都市の無秩序な拡大は、生産性の高い優良農地を潰しており今後は農地を安易に住宅、工場
等に転用しないような施策を実施すべきです。
 都市の降雨時の災害は、遊水池としての役割を周囲の農地が果たしていたのに無秩序に開発
した結果発生したのです。このような対策として、現在洪水対策として排水トンネル、遊水地を建設
しているが、本来の農地を有効活用すればある程度は防げたことです。
 今後においては、農地の環境面の機能、水資源涵養機能を重視した活用を図りつつ維持していく
べきと思います。
 国土面積において、占める割合の高い農業生産性の低い中山間地域は高齢化、過疎化が進み
今後放置すれば国土の均衡ある発展が不可能になる。
 森林資源、水資源の涵養をしつつ行う水田農業、酪農、施設野菜等において無視できない特産品
を生産しており、所得補償制度等において生産不利な条件をカバ−する必要があります。
 

 結論としては、現実無視のこのような理想論が現実社会にギャップなしに受け入れられるかは
私自身、判らない。
 ただ、農地の無秩序な転用、農業生産の放棄がこれからの日本の将来にとり不安な要素に
なるのは確実です。
    アメリカのカリフォルニア州における稲作農業  アメリカ全体の作付け面積 100万ha程度