道路土工 について

 道路土工とは、道路建設工事においては必ず必要な作業工程であり この計画、実施が全体の
土木工事の良否を決するといってもよい。
 日本の場合は、平野部の軟弱地盤、火山灰地域、山岳部の地すべり、破砕 された地層、
カコウ岩が風化したマサ土等、多種多様な土工対象があり、画一的な対策が 困難である。
その対策としては、次のような基本的な事項について考慮する必要がありま す。
1)土質調査、試験を道路計画路線については実施して、その成果を充分に 活用する。
2)道路土工指針に定められている、切土、盛土の勾配の決定においては土 質、土層の分布状態、
湧水の有無等を総合的に判断して決定する。その場合、法面の排水系統、排 水断面、法面防護に
ついても充分考慮する必要がある。
3)土工実施場合、掘削、切土、盛土の一連の作業過程において含水状態、 降雨状態、土質の状態
により適切な判断が求められる。
4)盛土、機械土工等においては土質力学における安定性、繰り返し荷重に よる強度低下、
強度回復等についての知識を活用して材料や、施工方法の適切な選択をすべ きです。
 
 道路を建設する場合に、切土区間、盛土区間、トンネル区間、橋梁区間、横断構造区間等に分類
されるが、ここでは、トンネル区間、橋梁区間は考えない。
当時の現場施工の技術者が総力を上げて作成しており技術的に貴重な資料です。
 この貴重な資料を私自身で、再検討して編集したものです。

1)切土について

切土において地質、土層分布、湧水の有無等を考慮して、掘削法勾配、施工方法、法面対策が
異なるが、一応の基準は『道路土工指針』を参考とする。
 硬岩の場合は、0.3〜0.5割   注: 高さ1mに対して0.3mの幅があるとの意味
 軟岩の場合は、0.5〜1.2割
 砂の場合は、 1.5割〜
 砂質土の場合は、締まっているものは 5m以下 0.8〜1.0割  5〜10m 1.0〜1.2割
 れき質土の場合は、締まっている場合10m以下 0.8〜1.0割 10〜15m 1.0〜 1.2割
 岩塊または玉石混じりの粘土 5m以下 1.0〜1.2割   5〜10m 1.2〜1.5割

 のように規定されているが、実際の適用は各種関係団体の設計要綱、通達等で異なる。
地質、土層により対策が異なると述べたが、ここでは実際の横断図を例にして考える。
 この横断図は、中国縦貫自動車道路のある工区で当時はすべて英語。
上記の掘削勾配が、忠実に施工図面に反映されていると、今になって感心します。
技術の蓄積、絶え間ざる関係者の経験が生かされていると思います。
 

  


  測点100+0.00における計画高PHE=399.311 で土工掘削断面が土砂タイプ
 A=468.5m2  上部路床 A=7.1m2 となっています。
  測点100+6.978における計画高PHE=399.237で土工掘削断面が土砂タイプ
 A=472.0m2  上部路床 A=7.1m2となっています。
  この場合、下部路床に相当する部分については掘削作業段階で上部路床30Cmを施工
 した時にタワミ量が許容値(5mm以下)になるか検討する必要がある。
  場合によっては舗装構造の検討が、下部路床から土質の強度を考えると必要な場合もある。
   切土の法勾配は、向かって右側はほぼ 1:1.2であり法面の1段、2段はコンクリ −ト法枠工
 21mを施工し、上部は植生工を予定しています。
 向かって左は、1:1.1であり植生工のみの施工予定となっている。

 1. 準備工

  上記の工事を受注した場合は、施工準備をする訳ですか゛現地の事務所設置、地元関係者
 に対する協力依頼、施工計画書の作成、資材計画、労務計画、現地の用地内の測量と忙しく
 なります。
  測量作業に関しては、現況のセンタ−杭の水準測量をして高さのチェックをし、200m間隔
 に仮BMを設置して本格的な工事開始に備える。
 道路センタ−測量は、役杭(KA,KE,BC,EC)の引照点成果表から位置をチェックして工事
 に支障がある場合は、移設して保護する。
  当時は、光波の測量機器はなく、レベル、トランシットが最新の測量道具であり、センタ−長
 は、鋼製スチ−ルのテ−プを利用して測定していた。温度補正、張力補正、たるみ等の調整
 が必要であり苦労していた。
  センタ−杭のチェック、修正が終われば杭の接線直角方向に距離、高さを記録して施工用の
 丁張を設置する。 この時に、用地杭の確認も行う。
 各測点における横断方向の現況測量を実施して、設計書との照査を行い成果品として発注者
 に提出する。
  施工区間内に、ボックスカルバ−ト、パイプカルバ−ト、等の横断構造物がある場合は構造物
 のセンタ−方向に片側2点以上の引照点を設置する。
 計画構造物の地山との位置関係、呑口、吐口の取り合わせも確認をしておく。

 2.工事用道路

  工事用道路は、在来の県道、市町村道を利用する場合と将来は側道として地元に移管する
 場合があるがいずれの場合も、施工に当っては安全管理、関係官庁との協議が必要です。
  本線内に工事用道路を設ける場合は、抜開徐根作業(表土より30cm)の完了地域より
 ブルド−ザ−、バックホウ等にて全線に幅員4.0m、砕石厚4.0cm程度の仮設道路を
 設置する。この道路は、施工進捗に伴い資材運搬、ダンプトラックの走路として活用する。
 道路の線形は、単曲線で充分で、縦断勾配は10%以内として、退避所も考慮する。
  走行車両等により、工事用道路が破損した場合はモ−タ−グレ−ダ−等により砕石の
 補足材を入れながら補修する。 

 3.準備排水
 
  切土部分に、地下水の存在が予想される場合は作業に先立ち、準備排水、仮排水の対策を
 実施する。 必要個所には、地下排水工の施工も必要となる。

 4.建設機械の稼動日数の算定

  該当地域の、水文、気象デ−タ−を収集して降雨日数、積雪日数、機械稼働可能雨量、
 休日、等を総合的に算定して、稼働率を算定する。
  例として示せば、積雪地域においては1月 0.0 2月 0.14  その他の月は 0.4
 から0.56位の値になります。一般的には作業条件が良好ならば、0.6〜0.8の場合
 もあるが安全な工程管理を考える場合は、過大な数値は採用しないほうがよい。
  
 5.建設機械の選定

  建設機械の作業内容は、抜開徐根、掘削、積込、運搬、転圧、敷き均し、資材の積み下ろし
 等が考えられる。
  土工の場合は、作業の距離によりブルド−ザ−主体、スクレ−パ−主体、バックホウとダンプ
 主体に分類される。
  ブルド−ザ−の場合の平均運搬距離は60m、最大で100mとされ、横断方向に切土、盛土が
 有る場合は、掘削、運搬、敷き均し、転圧が一連の作業として可能で効率的である。
  スクレ−パ−の場合は、通常60 m以上、500m程度が効率的とされ走行性が悪い場合は
 補助として、プッシュド−ザ−を併用する。
 ただし、スクレ−パ−を使用する場合は、掘削、運搬、敷き均しの一連作業であり転圧は、
 ブルド−ザ−、タイヤロ−ラ−等を別途準備する必要がある。
  ショベルとダンプの場合は、運搬距離が上記の条件に合致しない場合に利用される。

本線盛土における試験施工  

この結果により、転圧回数、機械の組み合わせ、巻きだし厚さ等を決定した。

       
 

 6.建設機械の作業能力算定

  1) ブルド−ザ−の作業能力

    Q=60*q*f*E/Cm...........(6−1)

 ここで、Q は運転時間当りの作業量(m3/h)
      q は一回の掘削押土量(m3)
      f は土量換算係数
      E は作業効率 
      Cmはサイクルタイム  0.037L+0.25   Lは押土距離
      
一般の土工事に使用されるのは、15T級と21T級が汎用タイプであるので効率と押土距離との表を
作成しておいて、能力を算定すると便利である。

 2)リッパ−の作業能力

 Q=60*An*L*f*E/Cm..........(6−2)

 ここで、Anはリッピングの断面積(m2)
     Cmは、サイクルタイム  0.05L+0.33( min ) Lはリッピング距離
     その他の記号は上記と同じ。

 ブルド−ザ−との合成作業量は、次式にて算定される。

 QN=Qr*(QB+NQb)/(Qr+QB)..........(6−3)

 ここで、Nは集土ブルド−ザ−の台数を表す。

 ここで、ブルド−ザ−の集土作業量QB= 80m3/hとして、リッパ−Qr= 60*0.4*20*1*0.4/1.33

 =144m3/h  として合成作業量を算定する。 

 集土ブルド−ザ−の補助が無い場合は

QN=144*80/(144+80)≒51m3/h

 1台の集土21T集土ブルド−ザ−を使用した場合。

Qb=60*q*f*E/Cm=60*4.13*1/1.5*0.3/0.99=48m3/hとなります。

ただし、 Cm=0.037*20+0.25=0.99min   一回の作業距離は20mとしている。

QN=144*(80+1*48)/(144+80)=82m3/hとなります。

ここで、作業効率Eは、リッピングが0.4  集土作業が0.3を採用している。

3)スクレ−パ−の作業能力

Q=60*q*f*E/Cm............(6−4)

記号は既に記載した通りである。

スクレ−パ−には自走式と非牽引式の2種類がある。

22m3級のキャリオ−.ルスクレ−パ−の作業量(被牽引式)

一回当りの容量qは、 q=q0*K=21.4*0.9=19.3m3

土量換算係数fは砂質土として1.3として、地山換算とするので  f1/1.3=0.77

サイクルタイムCmは         ここで運土距離L=150mと想定する。

Cm=D/Vd+100/Vh1+(H−100)/Vh2+S/Vs+100/Vr1+(R−100)/Vr2+ tg...(6−5)

ここで、Dは積込みに要する距離 40m  Vdは積込み速度 40m/min  Sは散土距離 30m

Vh1は運搬速度 70m/min  Vh2は100mを越えた場合の運搬速度で125m/min

Hは運搬距離  L−(D+S)/2=150−(40+30)/2=115m

Sは散土距離 30m  Vsは散土時間 55m/min  Vr1は帰り速度 60m/min

Rは帰り距離で 150m*1.8=270m   ただし1.8は補正係数

Vr2は100mを越した距離の帰りの速度 115m  tgはギヤの入れ替え時間 0.3min

Cm=40/40+100/70+(115−100)/125+30/55+100/60+(270−100) /115

   +0.3

=6.56min

ここでスクレ−パ−の作業能力Qは  作業効率E=0.70として

Q=60*19.3*0.77*0.70/6.56

 =95.1m3/h  となる。

ここで、プッシャとしてのブルド−ザ−の台数Nは  Cm/Cm′=6.56/2.00

≒3台 必要である。  Cm′ブルド−ザ−の平均のサイクルタイム

4)ショベル系掘削機の作業能力(油圧式クロ−ラ型)

Q=3,600*q0*K*f*E/Cm..........(6−5)

ここで、Q: 運転時間当りの作業量  (m3/h)

     k: バケット係数    0.9

     f : 土量換算係数   ほぐした土  1

     E: 作業効率   0.6

     Cm: サイクルタイム   25sec

     q0: バケット容量   0.6m3

Q=3,600*0.6*0.9*1*0.6/25

 =47m3/h

5)トラクタ−ショベルの作業能力

Q=3,600*q0*K*f*E/Cm..........(6−7)

記号はショベル系掘削機と全く同じであるが、サイクルタイムが若干異なる。

 q0=2.0m2  k=0.7  f=1  E=0.55 ( 山積み状態からのすくい上げ)

Cm=mL+t1+t2

ここでLは片道運搬距離  10m  mはトラクタ−ショベルの足回りによる係数2.0sec/m

t1はすくい上げ時間  20sec  t2は採取、ギヤ入れ替え、積み込み等の時間 15sec

Cm=10*2.0+20+15

   =55sec

Q=3.600*2.0*0.7*1*0.55/55

 =50m3/h

6)ダンプトラックの作業能力

Q=60*q0*f*E/Cm...............(6−8)

記号の定義は従来通りであるが、計算式が煩雑で紙面のスペ−スの関係で省略します。

計算結果を紹介すると、土砂の場合 運搬距離L=2,6km サイクルタイムCm=22,1min      
作業量Q=17,2m3/h

軟岩の場合 運搬距離L=1,1km  サイクルタイムCm=15,5min 
作業量Q=24,5m3/h

硬岩の場合 運搬距離L=1,6km  サイクルタイムCm=17,3min
作業量Q=21,9m3/h

積み込みは、2,0m3級のトラクタ−ショベルを使用しての一連作業。
上記のトラククタ−ショベルの能力から、ダンプトラックが3台は能力の均衡からして必要である。

本線切土と盛土の本格的な施 工開始状態。


7.土工事重機使用計画

7−1 ) 作業日数の算定(延作業日数)

延作業日数 D=総土工量 Vm3/ 一日当り作業量Qd(m3/d)

一日当り作業量 Qd=運転時間当り作業量Q(m3/d)*一日当り運転時間 Td(h/d)

ここで、一日当り運転時間 Td=6,5(h/d)   暦日数=作業日数*1/稼働日数率

この工区では、稼働日数率は 0.5を採用した。

運転時間率  6,5/8,0=0.81

7−2) ブルワ−クの場合

V=115,494m3 .......(盛土換算)   平均距離   L=29,0m

21t級ブルド−ザ−の場合にて掘削作業を行う。  表にて算定している、Q=101m3/h

( L=40m E=0.8)  

Qd=Q*C/L*Td=101*0.9/1.3*6.5≒450m3/d

延べ作業日数 D=V/Qd=115,494/450=256  (台.日)

7−3) キャリワ−クの場合

V=190,703m3 (盛土換算)   平均距離 L=121m

22m3級キャリオ−ルスクレ−パ−にて掘削、運搬を行う。

牽引及び補助には、32t級ブルド−ザ−を使用する。 上記の資料より3台

運土距離 L=150mとすれば、上記の計算式より Q=95m3/h  地山換算

Qd=Q*C*Td=95*0.9*6.5≒550m3/d

延べ作業日数D=V/Qd=190,703/550=347 (台.日)

7−4) ショベルとダンプの場合

V=283,372m3(盛土換算)  平均距離 L=2026m

2.0m3級のトラクタ−ショベルにて積込みし、11t級のダンプトラックにて運搬する。

トラクタ−ショベル  Qs=64,0m3 m3/h  (ほぐした状態)

11t級ダンプトラック Qd=17,2m3/h     (   ″   )

Qsd=Qs*C/L*Td=64,0*0.9/1.3*6,5=288m3/d

QDd=Qd*C/L*Td=17,2*0.9/1.3*6,5=77m3/d

トラクタ−ショベル D=V/Qsd=283,372/288=984(台.日)

ダンプトラック   D=V/QDd=283,372/77= 3680( 台.日)

この一連作業の掘削、集土は21t級のブルド−ザ−にて行う。

Q=79m3/h   (L=50m  E=0,8)

Qd=Q*C/L*Td=79*0.9/1.3*6,5=355m3/d

D=V/Qd=283,372/355=798( 台.日)

以上のような計算を延々として、全体の工種の日数計算をする。

標準土工量は、トラクタ−ショベル288m3/d*4台=1160m3/d

工期を100日として、設定すると上記の稼働率0.5とすれば暦日数は200日となる。

全体の必要機械計画は、トラクタ−ショベル4.9台/日、ダンプトラック18.3台/日

21t級ブルド−ザ−は、4台/日が作業日には必要な組み合わせである。

その他、タイヤロ−ラ−15トン級を1台常備しておく。

機械能力、機械工程計画までを長々と書いたが、機械施工、盛土施工は次回に予定します。