砂 防  に つ い て

 
 地形急峻な日本は、降雨による河川氾濫、土砂崩れ、土石流が毎年発生しており
災害対策は国土の総合的な利用において必要な施策と確信しています。
 かってのスイス、ドイツ、オ−ストラリアの技師等を招聘して技術取得の時代があったが
現在は日本が自己の体験を通じて確立した技術として国際的に通用するまでになっています。
 砂防工学は、林学と土木工学を応用した総合的な応用技術として定義されており技術者の
教育は農学部にてされています。
 現在の砂防の実態は、土砂流出防止、民生の安定、環境への配慮等が加わり当初の
目的の渓流、山腹保全、治山、林地保全から適用範囲が拡大しつつある。
 それだけ砂防技術が日本にては必要な分野であることの証明でもあると思います。
砂防について考える場合に、雨に関する水文学、気象学、地質学、水理学、構造力学、
河川工学、物理学、応用数学、情報工学、土質力学、林学全般の基礎的な知識が必要です。
 

1)水文学について

 地球上の水の量について扱う学問が水文学で、水の力学的な側面について扱うのは水理学
として区別されています。 地球上の水は太陽の熱により蒸発して水蒸気となり降水として林地
農地、都市等に影響を及ぼし河道により、最終的には海に流出する。
 このような水の循環は(hydrologic cycle)といわれる。
雨の量の算定に、平均法、チィ−セン法、等雨量線法、雨量−高度法、平均面積高度法
があるが、専門書を参照されたし。
 ここで、最小2乗法による回帰直線について説明します。この式は応用範囲が広い。
高度と降水量にXとyの関係があると仮定する。  aとbは定数。

 y=a+bx...........(1)
 

定数a,bについて次式にて最小2乗法で統計処理が可能です。
 

   n[xy]−[x][y]           [x2][y]−[x][xy]
b=――――――――         a=――――――――    ......(2)
   n[x2]−[x]2                   n[x2]−[x]
 

この場合に、相関係数rがあり、r>0の場合,xとyは正の相関関係r<0の場合は
負の相関関係があることになる。rが±1に近づく場合は相関関係が高い。

この式の応用範囲は広く、この式の拡大した水位−流量曲線があるが考えは同じです。

この場合は参考までに書くと次のようになります。

Q=a+bh+ch2...........................(3)

ここで、a,b,cは定数でQは流量でhは水位を表します。 ちっと公式が煩雑になります。

水の流出に関しては、私のHP上にて簡単に説明しているので省略します。

水の流出の形態に、表面流出(surface runoff) 中間流出(interflow) 基底流出

(base flow)があり、水位流量曲線により決定する。

実際の作業は、習熟しなければ非常に難しい。
 

3)水理学について

水の流れを考える場合に重要なことは、位置エネルギ−は保存されることである。

これは、Bernoulli(ベルヌイ)の定理として知られています。

2/2g +Z+P/w=V2/2g+Z+P/w+hL...........(4)

ここでV2/2gは速度水頭  Zは高さ  p/wは圧力水頭  hは損失水頭

この式の単位は、m でありすべての水理現象を高さに換算して考えるとの意味です。

水の流れには、定流、不定流があり定流のうちで通水断面、勾配が一定なものを

等流といい、それ以外を不等流といいます。

Q=Av =一定.........(5)    動水勾配  I=const......(6)

動水勾配Iが一定でない場合が不等流になります。

証明は偏微分を使用しての手法となり難解ですので、結果のみ書きます。

定流状態の限界流速はVc=Q/bhc= √ghc  ..........(7)

ここで通常の流速Vを想定して、√ghとの比を考えてみる。

r=V/√gh..............(8)

この式のFをフル−ド数といいFr<1の場合は常流、F>1の場合を射流といいます。

具体的な現象として、堰などで流れる水に棒を差し込んで観察していると波紋が上流に

伝播している区間は常流です。

しかし、波紋が消える場所がありますがここが限界流速を発生している場所です。

その後は水は、射流となり落下して在来の水深とぶつかり跳水現象を発生させて定流に

戻ります。 跳水現象により位置エネルギ−が運動エネルギ−に変化したのです。

開水路を流れる平均流速公式として、Chezy(セジ−)公式があります。

V=C√RI................(9)

ここで、Cは粗度n、動水勾配I、径深R等の関数と考えられ、Ganguillet−Kutterや

Chezyによって式が作られています。  式は専門書参照。

粗度係数の決定は流速に大きく影響するので慎重にしなければいけないが、水理公式集

に記載されています。 たとえば急流を成す河川 0.060〜0.080となります。

 砂防を考える場合に、河床の土砂の運搬に関する把握も非常に必要な分野です。

流送土砂は、河床を滑動、転動または跳動するものを掃流砂(bed load)といいます。

更に流路に浮かんだ状態で運ばれるものを浮遊砂(suspended Load)といいます。

河床にある土砂を動かす力を限界掃流力という概念で表します。
               2     2           2
τ0=ρgRIe=ρg(U)/(C)  =ρ(U※)   ........(10)

ここで、τはせん断応力で、Rは径深 Iはエネルギ−の勾配、Uは平均流速、Cは

Chezyの係数です。 ρは密度を表します。 Uは摩擦速度といいます。

限界摩擦速度τや限界摩擦速度Ucに関しては shield公式、栗原公式、岩垣公式

がある。 結果としては、砂の粒径dから限界摩擦速度Ucを算定する。

この数値を利用して、流砂量を算定する。  Brown公式、土研公式、がある。

 渓流に長期の降雨により、林地崩壊、山腹崩壊する土砂と岩交じりの洪水流を土石流として

呼んでおり、毎年梅雨の終わり頃に多発する。

 F.Wangは土石流を流体の質量移動として考え次のような式を提唱している。

ρQV=[ ρQ+α(ρ1−ρ)]V1.........(11)    α=1として

これより、v1≒0,4V................. (12)

ここで、記号の説明をするとρは流水の密度、Qは流量 Vは流速

ρ1は流水に混入する土砂の密度  V1は土石流として流下する洪水流の速度。

過去の観測例から土石流の流下速度は、1〜2m/secから10m/sec以上の

ものまであり、一気に流れて家、田,畑,公共施設を破壊して,時には人命まで奪う。

対策としては、日常生活の中で周囲の地質、植生、傾斜度、災害履歴を把握しておく

ことは非常に大切です。

連続した降雨後の集中豪雨は、地盤の強度が弱くなった地層のすべりを誘発する可能性

が高いので注意を要する。災害に関連するリンク  http://www.disaster-i.net/

国土交 通省河川局砂防部 も参考になる

 土石流発生のメカニズムは、地形条件、降雨の特性、地質の条件、植生等により

異なり専門的書にて研究していただきたい。

4)対策工について

砂防を考える場合、山腹対策、渓流対策に分類される。

山腹対策としては崩壊した地形の原型復旧、ハゲ山の植生回復、土砂流失防止が

考えられる。 地形の変形現象として把握される、地すべり対策も含まれる。

今回は、渓流の横方向侵食防止と縦方向侵食防止を目的とした砂防ダムの設計例

を掲載します。高さ15m以下との前提条件があります。

設計は、当時の『砂防、地すべり防止 急傾斜地崩壊防止』工事ポケットブックに

よって設計したとあります。この計算は相当変更されて完成したものはこのように

なっていないが、砂防ダムの計算方法の考えは現在も大差はない。   
  

 

高知県大豊町にて、国土交通省四国山地砂防事務所にて実施さ れた施工例です。

平成15年7月  撮影
                     
     砂防ダム後部の両岸の護岸工  天然石を活用している。

  砂防ダム本体工 水通し部は100年確率降雨量にて計算しているはず。
 

 


 
      下流から、護岸工を望む  後方右には、流路工を施工している。

       河床は、縦侵食防止を目的して天然石を敷き詰めている。