バイオマス(biomass)の 利用

 バイオマスとは人間 の存在も含めた生物体とそれからの有機物のすべてを含む生態学の概念です。
地球上の植物の現在量と生産量は乾物に換算して、1兆8000億
トンと推定され、毎年 の生産量は1,700億トン
と推定されています。(農林水産省 FAO資料 1980)
地球環境を考える時、化石エネルギ−の石油、石炭、天然ガスはいずれ枯渇する再生不可能なもので燃焼の度に二酸化炭素、SOX、NOX等の環境汚染物質を 排出します。
バイオマスは適正な資源管理をすれば、再生可能な資源で燃料として排出された二酸化炭素は生物系が維持される限り
再度植物に吸収されます。カ−ボン.ニュ−トラルと称され炭素の大気への放出はないとされます。
今後は再生可能資源を、燃料、食料、工業用原料に利用して、化石資源の利用依存から脱却することが必要となります。
 
地球上に存在する、森 林や海の生物が太陽エネルギ−を利用して炭酸ガスと水を利用してデンプン、セルロ−ス、蛋白質、脂質などの複雑な有機化合物を作りだす工場といえます。古 典的な生物学の教科書に記載されている光合成は次の化学式にて表現されます。 6CO2+6H2O+光エネルギ−(675.6cal)→C6H12O6+ 6O6

とされる有名な式です。

この概念が生物生産を 考える基本的認識となります。
太陽エネル ギ−はアデ ノシン3燐酸(ATP)の形で化学エネルギ−に変換されて、
必要に応じ てアデノシ ン2燐酸(ADP)に変わり代謝や運動の形にて仕事をする。
また水からは電子を奪 い還元する酵素酵素NADPH2を作ります。これ が最新の光合成研 究の成果とされています。


                   上記の画像は樹齢40年の間伐された人工林 推定材 積 (250m3/ha)

 光合成には一般的に、 3種類の方法があるとされる。

C3タイプ、C4タイ プ、CAMタイプに分類される。

C3タイプには、稲、 麦、杉などの温帯植物がこれに含まれます

これはカルビン.ベン ソン回路で二酸化炭素が固定されて最初にグリセルアルデヒド3燐酸(GA3P)が 生成されること



に由来します。
 C4タイプにはサトウ キビ、トウモロコシ等があります。

これは二酸化炭素を固 定して出来る最初の化合物が炭素原子4個のオキサロ酢酸が
生成することに由来す る
特徴は強い日射と高温 の環境では、C3植物よりは光合成能力が高い。CAMタイ プにはパイ ナップル、サボテンが属します生物 生産にとって重要 なのは、C3タイプが温帯地域に属し、C4タイプが比較的高温地域に属している ことです。
今後地球温 暖化現象が 顕著になれば、C3域が北上して生産量が減少 し地球上にて穀物生産が減少する可能性が指摘されています。逆にC4タイプは生産可能地域が広がる結果とはなりますが。

 二酸化炭素の地球上の収支は、概数で陸上で16億トン、海洋で16億トンそれぞれ吸収しています。
一方石油、石炭の燃焼等により人類は64億トンを大気中に排出していますので、差し引き約32億トン毎年増加している
ことになりこれが地球温暖化の原因と指摘されています。

 バイオマスのエネルギ−としての位置づけとして国際エネルギ-機関(IEA)が2020年の需要予測をしています。
石油36%、石炭22%、天然ガス24%、バイオマスと廃棄物10%、 その他原子力、水力等としています。
この数字から認識しなければならないのはバイオマスが未来のエネルギ-の救世主として役割を果すことは期待されず、あくまでも
補完的なものです。

 石油、天然ガスは一般的な予測してあと現在のペ−スで人類が使用すると50〜60年後には無くなるとされています。
その代替として地域的に偏在しない、バイオの活用を図るのは当然の帰結ですが技術的には困難な課題があります。

 バイオマスは天然資源、農作物、林産物等の活用ですから生産が不安定、食料との競合、かさばるので収穫、運搬、
貯蔵にコストがかかります。生産効率が悪く、大量に生産すると生態系を破壊し、再生が不可能となることも考えられ
工業製品とは異なる問題があります。
 しかし化石燃料と異なり、再生可能、地域的な偏りが少ない、多様性があるメリットがあります。

 現在具体的な利用としては、砂糖キビからバイオエタノ-ルを抽出して燃料として活用することが現在ブラジル等で実用化
されています。エタノ−ルをガソリンに22〜25%を混合して国内のほぼすべての自動車を動かしているとのことです。
 その他の活用法としてはバイオマスを燃料として、或いはセルロ-ス、デンプン、リグニン、たんぱく質含む木質部等を石油の代わりの工業用原料として活用 することも実用化されつつあります。アメリカ等においてトウモロコシからバイオエタノ−ルの生産がされているが
サトウキビからのエネルギ-産出投入比が6と比較してトウモロコシは 1.3程度であり効率が悪くかつ食料と競合する。
 ナタネ、ヒマワリ、などからもバイオエタノ-ルは生産可能ですがトウモロコシ同様にエネルギ-産出投入比が1.3程度であり効率は
良くない。ダイズは0.94であり食料としての活用が望ましい。


 日本においては、稲わらの有効活用、メタン醗酵の利用、木質部のペレット化、石炭との混焼等が実用化されています。
又生ゴミ、下水汚泥、畜産廃棄物、食品廃棄物等からはメタン醗酵によりメタンが大量に発生します。
個々の事例について次回に考えたいと思います。